『宇宙よりも遠い場所』
2/3 (日)に静岡市で開催される藤津亮太先生の講座『アニメを読む 宇宙よりも遠い場所』の予習用として作成。予告には「物語がどのように組み立てられていたか」を解説される、と書いてあったので、今回は作品全体を俯瞰する内容で執筆。初回の記事から「映像表現に注目する」というタイトルからズレてしまっていますが、悪しからず(笑)
- 1.あらすじ
- 2.作品の魅力
- 3.作品の課題
- 4.テーマ解説
1.あらすじ
「ここじゃない場所に行きたいけど、怖くて一歩を踏み出せない」。そんな悩みを抱える高校2年生、玉木マリは、母親の手がかりを求めて南極へ行くことを目指している小淵沢報瀬と出会う。人間関係の悩みから高校に通っていない三宅日向は2人の会話を偶然耳にし、南極行きに加わる。タレントとしての忙しさから友達ができないことに悩んでいた白石結月は3人の行動に心を動かされ、共に南極へ行くことを決意する。それぞれがそれぞれの悩みを抱えながら、仲間と一緒にそれを乗り越えていく。少女たちの成長と友情を描写した、青春グラフィティ。
2.作品の魅力
・各話の前半で展開されるギャグパートが小気味よく、見ている者を飽きさせない。
・ストーリーや演出が見ている者に希望を与えてくれる。
3.作品の課題
・キマリ以外の登場人物の課題の描写が説得力に欠ける。キャラの所作ではなくセリフで表現するに留まっている。特に日向と結月。日向:集団の中でぐちゃぐちゃ~ってのが苦手で(2話)、結月:私、友達いないんです(3話)。
・キャラの関係性が固定化しており、本作のテーマである「仲間とともに」悩みを乗り越える、が十分には表現されていない。
(例1)結月の課題に最初にアプローチするのはいつもキマリ(3話、ファミレスで結月を抱きしめる場面。10話、1人だけサンタに扮して結月を部屋のドアをノックする)
(例2)日向の課題解決は、ほぼ報瀬が担当。キマリと結月は日向の異常に気付かず(11話、年賀状を作っている場面)
おそらく、キマリ&結月、報瀬&日向というカップリングが設定されていたのだろう。それぞれのグループが強調されるような画面作りが多く見られた。例えば、6話でのホテルの部屋割りや、11話でキマリと結月が郵便局員をしているところ。
4.テーマ解説
ここでは、本作のテーマである、「悩みを仲間と一緒に乗り越える」(13話、夏隊の帰還式での報瀬のスピーチを参照)が作中でどのように表現されているかを解説する。
玉木マリ
課題:失敗を恐れて一歩を踏み出せない
解決:1話。「怖い」とベッドの上で逡巡するが、報瀬に誘われた時のことを思い出し、南極行きを決意する。
小淵沢報瀬
課題1:人前で話すことが苦手
解決1:7話。はじめは緊張で俯いていたが、日向に背中(というか尻)を押されて、大勢の隊員たちを前に、きちんと前を向いてスピーチできた。
課題2:自分の気持ちが優先。他人のことを考えない。
解決2:11話。日向のことを想って、陸上部の面々に「日向と関わるな」と告げた。
※日向を思い遣っているようでいて、自分の「4人で行きたい」という気持ちが強くでていた6話とは大きく異なっていた。
三宅日向
課題:他人の気持ちを受け止められない。思いやりに対する拒否反応。
解決:11話。報瀬の行動を見て泣き崩れる。(それまでは、思いやりを見せるとデコピンをしたり、であった)
白石結月
課題:友達がいない。「友達」が何か分からない。「友達」とどう付き合えばよいか分からない。
解決:10話。キマリの主導で、3人が結月の誕生日を祝う。
高橋めぐみ
課題:自分の存在価値をキマリに依存。
解決:5話。自ら「絶交」を申し出る。13話。キマリとは異なる行動を見せる。